恋人騒ぎ

高原さんちの翠蓮ちゃんと言えば、少々変わってはいましたがおしゃまな女の子でご近所でも評判の子です。
お母さん譲りだという緑色の長い髪が自慢の一つで、そのお母さんと一緒にキノウツンという酷く治安の悪かった国で、怪我人を治すためにあちらこちらを周っていた事もあったとか。
この娘をとても自慢に思って可愛がっている父親はといえば、もしこの子が大きくなっても今のままだったらどうしたものか、ああ嬉しくはあるんだけどそのなんだうーん、と奥さんの気配を後ろに感じながら、悪い虫がつかないようにと願う日々でした。
(一時期実際に手を出した奴は鉛弾食らわすぞ、と笑いながら冗談の一切無い目で夜な夜な銃を手入れしていたという噂もありますがさておき)

ある日、その翠蓮の様子がおかしい、とお母さんが父親に話した事から今日の話は始まります。

「え、何が?」
最近国に出来た病院の手伝いから帰ってきた父親は珍しくビールを飲みながら聞き返します。
お母さんは黙って足元からひょい、と何かを持ち上げました。飼い猫のアントニオです
「最近何か隠れてこそこそやってるんだって。留守番の最中に」
「にゃー」
欠伸交じりにアントニオが鳴きました。
「…よく聞き出せたね」
「煮干で口止めしてたのを、マタタビで買収したわ」
どこの企業スパイだろう、と脳内で#つけるだけで留めると父親はビールの缶を口から離して
「まあ、年頃の女の子だし、親に隠し事の一つや二つくらいは」
「最近、買い物した後どっかに寄り道しているみたいなの。
「…買い食いとか」
「お釣りの額は変わってないし、使った分はきっちり帳面につけさせてる。貴方がたまに上げてるお小遣いも」
そういってお母さんは一呼吸置くと
「男ね。間違いないわ」
と言いました。
長いこと幼馴染と繰り広げた数多の-争奪戦での勝率1割以下だけど結婚したんだから私の勝ちだ、と言い張っている-恋の戦いを争ってきたお母さんの女の勘がビビ、と働いたのよ、と後に語っています。
「ちょっと銃の手入れをしてくる」
父親は感情の一切無い声で立ち上がると、鉛弾鉛弾とぶつぶつ呟きながら銃のある部屋へ歩き出します。
「鋼一郎?」
名前読んでも反応しないのを確かめたお母さんはため息をつきながら、素早く前に回りこみました。
次の瞬間、最大の被害者であった長男がいなくなって以来久々に伝家の宝刀であるキックが閃きます。
ゴッ、という鈍い音。

高原アララ、基本能力20(HQ含む)に白兵+3
一方高原鋼一郎、基本能力20(同じくHQ含む)に剣技の特殊で白兵行為に+2修正
差分-1 40%
ダイスロール

高原鋼一郎 の発言 :
1d100
高原鋼一郎 のアドイン "mihaDice" の発言 :
[mihaDice] 高原鋼一郎 : 1d100 -> 29 = 29

お母さんは驚愕しました。
高速で繰り出された右足を、父親は左腕でガード。見れば開いたほうの手に、バターナイフを握って剣技を発動させた模様。
なんとなく悔しかったお母さんはガードされた足を軸に、空中で回転しながら左足で回し蹴りを放ちました。
うっかり一発受け止めただけで、警戒を解いてしまったのが運の尽きだったようです。ゴッ、と今度こそ鈍い音をさせて、父親は崩れ落ちました。
全く男親は、と呟くと、お母さんは何となく嬉しそうな顔をして、ぶっ倒れたままの父親をずるずると引きずりながら寝室へと消えていきました。

翌日の朝

翠蓮ちゃんは朝早くから、友達と勉強してくると古来より使い古された台詞を言うと、いそいそと出かけています。
頭痛いな、飲みすぎたか、と誰に対しての言い訳なのか何なのかを呟きながらふらふらと娘を心配して跡をつける父親の姿もありました。
怪しさ全開ですが、警官を仕切ってる一番偉い人と知り合いの父親は無理やり話を通していたりするので大人力というのは恐ろしいですね。
翠蓮ちゃんはどことなくうきうきした様子で走っており、それを三十路の男が追いかけるのには結構辛いものがあるというか、それだけで一本物語が書けそうですが今回は全然関係ないので省略。

というか何気に以前贈ったリボンをしていてくれてるのは嬉しいんだが誰に会いにつけてるんだろうなあギギギ、と更に怪しくなっていく父親でした。

やってきたのは先日開業したばかりの共和国環状線、キノウツン駅。ぽす、と駅備え付けの喫茶で誰かと待ち合わせをするようです。
しょうがないので父親も雑誌で顔を隠しながら、コーヒーおかわりで粘ることにします。
そうこうしている内に1時間、2時間、3時間…

おかわりが30杯を過ぎようとした頃、新しいお客さんが入ってくると、翠蓮ちゃんは席から立ち上がりました
(ついに来たか)
殴って倒せる相手だといいなあと物騒な事を考えながらこっそり視線を巡らせると
そして客と翠蓮ちゃんが向かい合って-道を譲ってすれ違うと、まっすぐ父親の前にやってきて領収書をテーブルに置きました。
「パパ、お願い」
「…ばれてた?」
「バレバレ」

喫茶店を出ると、辺りはいつの間にか夕暮れになっていました
「まったく、レディの後を着け回しちゃ駄目よパパ」
「はい、スイマセン」
てくてくと歩く影は、大分長くなっています。もう日が沈むのも間近でしょう。
「で、結局誰と逢う予定だったの?」
「聞きたい?パパよりもいい人」
「マジデー」
「白いセーターを今度プレゼントするの」
「どいつ!?」

画像


やべえ、鉛弾じゃ済まさんぞ、と脳内で考えつつ酷く慌てふためく父親。
「うそ」
「はい!?」
「パパが聞いたらこうすると思ったし」
そういって翠蓮ちゃんはにこー、と笑うと、手を出して
「かえろ?パパ」
と言いました。
その日手を繋いで家路につく親子の姿があったといいます。

後日
自宅で手編みの白いセーターを着た父親を挟んで、翠蓮ちゃんとお母さんがすさまじいにらみ合いを繰り広げたと申しますが、それはまた別の話。

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